※私的勝手な妄想入ってます。ご注意ください。
見渡す限りの青空。 真っ青という表現がしっくりくるそんな空だ。
時折吹く柔らかい風が頬をなでる。
それが心地いいなんて柄にもなく思うのはここが自分の育った地だからだろうか。
ここが闇に落ちてたなんて信じられないな。
空を仰ぎ見てふと思う。
ここ、ホロウバスディオンは突如現れたハートレスによって侵略された。
逃げ惑う人々。
飛び交う怒号に悲痛な叫び。
その中に俺達はいた。
シドに先導されそれに続く・・・そう、続くはずだった。
皆一緒に助かるはずだったんだ。
どうしてあの時エアリスの手を離してしまったんだろう。
どうして視界の隅に捉えたハートレスに足を止めてしまったんだろう。
「クラウド!」
離れて行くエアリス。
人の波に飲まれていく俺。
手を伸ばしても、もう届くことはないと僅かに働く思考で理解した。
「きっと・・・きっと探し出すから!探し出してみせるから!!」
叫ぶだけで精一杯だった。
そうして遂にエアリスを見失った。
「んー気持ちいい!ね、クラウド」
爽やかな空気を満喫するように背伸びするエアリスが俺を振り返る。
「そうだな」
俺はエアリスの部屋へと招かれていた。
二人特に何をするでもなく、バルコニーへと続く扉を抜けエアリスは景色を一望できる位置に、俺は少し後ろへとその身を置いていた。
「クラウドに会えてからこうやってゆっくり話出来るの初めてだね」
「エアリスは俺と違って忙しいからな」
エアリスと再会してから既に数日が経過していた。
もちろんその間に言葉を交わすことはあった。
しかしエアリスの傍には常に誰かがいてせわしない。
エアリスはレオン達と供にホロウバスディオン再建に力を貸している為仕方ないのだが。
そして俺はというと・・・。
「今日は俺なんかといて大丈夫なのか?」
「うん、今日はレオンがゆっくりしていいって。お休みもらっちゃった」
チクリ・・・・ 鈍い痛みが広がる。
「クラウドにも手伝って欲しいのに気付いたらいないんだもん」
「俺は・・・そういうの苦手だから」
それは嘘じゃない。
ひたすらに強くなる為だけに戦いの中に身を置いてきた俺なんて役に立たない。
それに・・・
「・・・・見たくないから」
「何か言った?」
「・・・いや、何も」
思わず口を噤む俺を、変なクラウドと微笑むエアリス。
そう、見たくないんだ。
レオンといるエアリスを。
俺の存在しない時間の話をするエアリスを。
でもそれは俺の身勝手な感情であってエアリスに知られてはいけない。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、それ以降エアリスがその話題を持ち出すことはなかった。
「ところでその外套ずっと付けてるけど思い入れか何かあるの?」
「え・・・いや、別にそういう訳じゃない」
予想だにしなかった問いかけに一瞬の動揺を見せるも、それを感じさせないかのようにまた感情を押し殺す。
背中の一点に集中する熱。
俺の中に存在する黒い片翼。
力を使う時以外その姿を隠してはいるが、人目を阻むように常に外套を身に纏うようになった。
俺自身が目を背けたい表れだ。
エアリスはどうも納得がいかないようだが、それ以上詮索することなく、代わりに俺との間合いを詰めてきた。
人一人分を空けた位置で立ち止まる。
俺は驚いて少し背中を反らせたがそれを気にした風はない。
「でもクラウド変わったね。昔はもう少し素直だったと思うんだけどな」
手を後ろで組んで俺を下から覗き込み、更に言葉を続ける。
「やっと会えたと思ったら「興味ない」とか「俺には関係ない」としか言わないんだもん」
「それは・・・」
じっと見つめてくるエアリスの瞳を直視出来ず右下の方へと視線を逃がす。
「それに背もこんなに伸びちゃって。離れる前は私とそんなに変わらなかったのにね」
エアリスは後ろに回していた手を自分の胸元辺りに持ってきた。
俺の身長がそれくらいだったと言いたいんだろう。
「あの頃はクラウド可愛かったよね」
悪意のない笑顔に一瞬怯んでしまったが、年上の男に向かって可愛いという表現はさすがに黙っていられない。
「からかうな」
「からかってなんかないよ?」
「・・・9年だ。9年あれば人は変わる。俺の知らないエアリスの9年があるように、エアリスの知らない俺の9年がある」
俺だけが知らないエアリスの9年。
何に笑って。
何に泣いて。
何に怒って。
どう足掻いても共有することの出来ない時間。
「俺は強くなることだけを望んで今日まで生きてきた。そうしないとハートレスと戦えないから」
エアリスを守ることが出来ないから。
例えこの身が闇に染まろうとも。
無力だったこの手が許せなかった。
「それに・・・・」
笑うことをやめ、俺の話をじっと聞いていたエアリスの手首を握り自分の方へと引き寄せた。
そうすることで更に二人の距離が縮まり今度はエアリスが驚きの表情を見せた。
「俺だって男だ」
いつまでもエアリスと同じじゃいられない。
「あ・・・あの」
俺の顔と握られた自分の手を交互に見やるエアリス。
力の加減が出来ていただろうかと心配になりがらエアリスの手を解放する。
「だからもう可愛いはなしだ」
「・・・・うん」
小さく頷くとエアリスはくるりと俺に背を向けた。
そして俯き加減に言葉を続ける。
「ごめんね、クラウド。恥ずかしくて可愛いなんて言っちゃったけど、ほんとはクラウドと再会した時びっくりしたの。ううん、ドキドキしたって言う方が正しいかな」
「ドキドキ?」
俺が反芻するもエアリスは背中を向けたままでこちらを向こうとはしない。
「だって・・・私の知ってるクラウドじゃなかったから。すごく逞しくて、見上げなきゃいけないくらいになってて・・・そして約束を守ってくれた」
俺とエアリスとの約束?
「離れ離れになる時、クラウド言ってくれたよね?絶対探し出してみせるって。あの言葉がずっと私の支えだった。形のないお守りだったの。クラウドの代わりになって私を守り続けてくれた」
まさか覚えていたなんて。
9年も前の話だ。
しかも騒然とした中で咄嗟に叫んだ言葉。
聞こえていなくてもおかしくないと思ってた。
ずっと待っていてくれたのか?
途端に俺に背中を向けるエアリスの肩が小さく見えて手を伸ばしかけた。
しかし寸前のところで我に返る。
自分が犯した罪を思い出せ。
エアリスに会いたい一心で手にしてしまった闇の力。
例えそれがエアリスを遠ざけてしまうことになろうとも、二度と光に手が届かなくなろうとも。
ただ会いたかった。
そして今再び罪の意識が脈打ちだす。
エアリスを汚してはいけないと。
分かってる・・・分かってる、それでも・・・今この時だけは・・・。
俺は今度こそ躊躇うことなくエアリスをその腕の中へと包み込んだ。
「ク、クラウド?」
エアリスの体が強張るのが分かる。
しかし腕を解くことはしない。
「ごめん、もう少しだけ」
「・・・・どうかした?」
「・・・・どうもしてない」
「うそ。そうやって自分を隠すところは変わってないね」
エアリスが俺の腕にそっと触れる。
後ろから抱きしめている為、エアリスが俺の表情を確かめることは出来ない。
驚いた。 エアリスこそ変わっていない。
いつだって俺の些細な変化を見逃さない。
それが嬉しくて回した腕に力が入る。
「クラウド、私たちこれからよね?もう私の手を離さないでいてくれるよね?」
「・・・・ああ」
いつかは話さなければいけない。
本当の俺を。
でも今だけは・・・・。
今だけは・・・・。
俺だけの光をこの腕に・・・。
END
何を書きたいのか全然わからない(+_+)
14歳で離ればなれになってしまって、9年後に再会したらどんな感じなんだろうなと思いながら書いてたら変な方向へ行ってしまいました。
でも9年あればクラウドもぐんと背が伸びてるだろうし、逞しくもなってるだろうし。
エアリスも女性らしい体つきになってますよねーなんて。