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FFノマカプ版真剣お絵描き文字書き60分一本勝負お題  「苺」

「クラウドはイチゴ好き?」
「イチゴ?」

とある町のとある宿屋。
クラウドの前に姿を現したエアリスからの唐突な問いかけに思わず同じ単語を反芻する。
「どうしたんだいきなり」
「いいから。好き?嫌い?」
エアリスは首を傾げてクラウドを覗き込むように答えをせがんでくる。
(エ、エアリス、それは反則だ!)
その仕草だけで早鐘のようにうつ己の心臓の音を聞かれまいとクラウドはエアリスから距離を取るように一歩後ろへと足をひいた。
そして気持ちを落ち着けた後
「好きか嫌いかと聞かれたら・・・嫌いじゃない」
とだけ答えた。
「良かった!じゃあ一緒に食べよ」
そう言うとクラウドの返答に満足そうに笑みを浮かべたエアリスは自分の背中へと回していた手をクラウドの前へと差し出した。
エアリスの手の平に乗っていたのは数粒の苺が入ったガラスのボール。
鮮やかな赤色とはちきれんばかりのその実が印象的で、時折洗った後であろう水滴が反射しながらボールの底へと滑り落ちる。
「どうしたんだ、それ?」
クラウドの視線でそれが苺のことだと分かる。
「ここの店主がくれたの。今日採れたんだって」
晩御飯のデザート用に栽培しているのだろうか。
苺を収穫し宿へと戻ったところで、エアリスと一言二言会話を交わした店主が、フライングとばかりに数粒をエアリスの手の平に乗せてくれたらしい。
そして丁寧に洗った後、他の誰でもないクラウドの所へとやってきたのだ。

「はい、クラウド口開けて?」
「・・・・はい?」
間抜けな返答をしてしまったなんてことはこの際問題ではない。
クラウドの頭の中をあらゆる可能性が行き来する。

(口を開けるとはどういうことだ?言い換えるなら「クラウド、あーんして?」ということか?このシチュエーショからしてそれ以外ないよな?だとしたら・・・キターーー!!)

小さな小さなガッツポーズ。 もちろんエアリスには悟られないように。
「クラウド、イチゴいらない?」
「いる!いるに決まってる!!」
一向に動かないクラウドにエアリスは落ち込み気味に声をかけた。
それを慌てて否定するクラウド。
こんなチャンス逃す手はない。

クラウドは言われたように口を開けた。
それを確認したエアリスがまた笑顔を取り戻し、一粒の苺をクラウドの口の中へと入れると甘い香りがいっきに口内へと充満した。

「美味しい?」
「ああ・・・美味しい」
「うん・・・今クラウドが食べたイチゴね・・・・」
「・・・・?」
エアリスは俯き加減で更に言葉を続ける。
「何となく私に似てるなぁと思って。だからクラウドに持ってきたの。良かった、美味しいって言ってもらえて」
えへへと頬を赤らめて笑うエアリス。
もちろんクラウドは笑えるはずもなく。
もはや頭の中は修復不可能で煙を吹き出しそうだ。

(も・・・もっと味わえば良かった・・・・・って違う!そういうことじゃない!!エアリスは自分に似ているイチゴを俺に持ってきた。そして俺が食べたことを喜んで・・・・食べた・・・食べた・・・それは何を意味するんだ!考えろ!考えるんだクラウド!!!)

「あのークラウド?」
機械のようにカクカクと動きながら自分に背を向けてしまったクラウド。
ぽんぽんと肩を叩いてみるが反応はない。
その時だ、エアリスを呼ぶ声が聞こえたのは。

「エアリスー、ちょっと来てくれない?」
「ティファだ。はーい!」
姿は見せないがその声からティファだと分かった。
何か用事かな?と小首を傾げながらエアリスはもう一度クラウドへと声をかけた。
「クラウド?私呼ばれたから行くね?」
何とかクラウドに聞こえるようにと声のボリュームを上げてみるが、いまだ己と格闘しているクラウドにはやはり届かない。
「・・・・まぁ、いっか。また後でね?」
しばらくは戻ってきそうにないクラウドに諦めの色を見せ、エアリスはそれだけを言い残してティファの元へと駆け出して行った。
そして己と格闘しているクラウドはというと・・・

(これは・・・・そうだよな。そういうことだよな!エアリスが俺との・・・その・・・・それを望んでいる・・・俺も男だ!そうだ!男を見せてみろ、クラウド・ストライフ!!)

「エアリス!・・・・あれ?」
ようやく己との戦いに決着を付けたクラウドがエアリスのいた場所へと振り返り抱きしめようとしたがもはやそこにエアリスの姿はない。
それと同時にどこからかエアリスとティファの楽しそうな笑い声が聞こえる。
「・・・・・・・」
しばらく呆然と立ち尽くした後、ガクリと頭を垂れた。
またとないチャンスを逃してしまったクラウド。
後数秒早ければと悔やむクラウドの周りには、クラウドの哀愁と逃してしまった苺の甘い甘い香りがいつまでも漂っていた。



END


思ったより長くなってしまいました。
短くしようと思ったので細かい設定や描写なくて分かりづらいかも(-_-;)
クラウド崩壊ごめんなさい・・・